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サギング技法で噐を作る(I.A.さんの作品)
パウダーフュージングを始めて間もないI.A.さんが
サギング技法で中鉢を作りました。
これまで、サギング技法の工程を説明したことがなかったので、
この機会にサギング技法について説明します。
まず、ガラスの粉でガラス板を作り、
そこに模様を描き入れます。(上の写真)
ここまでは皆一緒です。
その後、成型の工程に入ります。
浅いお皿を作る場合は
お皿と同じ形の型を使ってガラス板を加熱成型する
スランピング技法を用いますが、
深さのある器の場合には、その方法は使えません。
スランピング技法は、
加熱して柔らかくなったガラス板を
型で支えて成型するという考え方ですが、
型を深くすると、縁の部分の斜面の角度が大きくなり、
ガラス板が斜面から滑り落ちてしまうからです。
そこで、下から支えるという考え方を止めて、
別の考え方に頭を切り替えます。
平らな板の中央に穴が空いたドーナツ状の型を使って、
柔らかくなったガラス板が
その穴から垂れ下がるようにします。
そして、垂れ下がる具合を見ながら
加熱する温度を調節したり、加熱を止めることで、
垂れ下がった形を作ります。
それがサギング技法の考え方です。
ガラス板が垂れ下がった状態というのは
ガラスが溶けて液状になる寸前の状態なので、
そのまま放置すると、
ガラスは溶けて下に落ちてしまいます。
そうなる直前の丁度良いタイミングを見計らって、
加熱を止めなければいけませんし、
下に支えがありませんから、
丁度良い形にするのは簡単ではありません。
いろいろな面で熟練が必要な技です。
こうしてサギング技法で成型した結果、
下の写真のような形になります。
帽子のツバのような部分が
平らな型の上に乗っていた部分で、
中央の丸くなった部分が
穴から垂れ下がった部分です。
このツバの部分を切り落として磨き、
楕円型の深さのある鉢の完成です。(下の写真)
I.A.さんは、サギング技法でもう一つ、作品を作りました。
そこにもサギング技法の
重要なポイントがあるので一緒に紹介します。
最初、ガラス板を作るところは一緒です。
ポイントは点で描いた同心円模様です。(上の写真)
これを、先ほどと同じように成型して
出来上がった作品が下の写真です。
縁の部分と、底の部分で
同心円状に描いた丸い点の形が違います。
写真で分かるなかなぁ?
縁の部分はガラスが垂れ下がるときに伸びるので
丸い点が楕円形に伸びています。
底の方は、伸びないので点が丸いままです。
こうして、縁の部分に描いた図柄が
伸びて変形するところがサギング技法の特徴です。
この特徴を活かすと、面白い作品ができます。
また、変形させたくない図柄だったら、
底の部分に描くとよいでしょう。
一度、こういう作品を作り、体験しておくと、
技法の特徴がよく分かります。
I.A.さんは、まだ始めたばかりですけど、
技法の特徴を理解しながら作品作りを進めています。
将来が楽しみですね~。