波柄模様のガラス板(Y.S.さんの制作過程)
ガラス粉からガラス板を作る方法として、
従来、次の二つの方法がありました。
●鋳造ガラス
まず、蝋でガラス板の形の原型を作り、
その原型全体を石膏で包み込むように型取りした後、
熱を加えて蝋を溶かすと、
石膏の雌型が出来上がります。
蝋で原型を作る代わりに、
粘土で原型を作ることもできますが、
粘土は熱で溶けないので、
割型と呼ぶ分割可能な石膏型を作ります。
割型の場合は、原型を石膏で型取りした後、
一旦型を分割して粘土を抜き取り、
再び型を組み立てて雌型が出来上がります。
こうして雌型を作ったら、そこにガラスの粉を入れて、
電気炉で焼成した後、
型を壊してガラス板を取り出します。
●オープンモールド
鋳造ガラスは原型全体を包み込むような石膏型を作りますが、
オープンモールドは板ガラスの形に
窪ませたお皿のような雌型を作って
ガラスを焼成する方法です。
ガラス板の形に窪んだところにガラス粉を入れて、
電気炉で焼成するとガラス板ができると思えばいいでしょう。
焼成したガラス板の上部は露出していますから、
そのまま型から取り出すことができ、型を再利用できますが、
2~3回使うと石膏型はぼろぼろになってしまいます。
1回で型がダメになってしまうこともありますから、
型は使い捨てだと思った方がよいかもしれません。
どちらの方法も型を作るのに労力と時間がかかりますし、
石膏型は使い捨てなので廃棄物処理のコストもかかります。
そこで、石膏型を扱うのが嫌いな私は
もっと簡単に楽しくできる方法はないかと考えました。
ある時、棚板は平らなんだから、
そこに直接ガラス粉を置けばいいんじゃない?
と思って試したのが始まりでした。
最初からすんなり行ったわけではありませんが、
何度も試すうちに石膏型を使わずに
ガラス板を作れるようになりました。
パウダーフュージングという技法はここから始まったといえます。
石膏型なしでも大丈夫なのは、ちゃんと理由があります。
ガラス粉を電気炉で加熱すると溶けて液状になりますが、
溶けたガラスはある程度粘り気があって表面張力が働くので、
棚から流れ落ちるようなことはなく、
粉の厚さに応じた厚さを保ちます。
その結果、薄くガラス粉を置けば薄いガラス板、
厚く置けば厚いガラス板ができます。
平らな棚板に砂絵を描くような感覚で
色分けしてガラス粉を配置すれば、
模様のついたガラス板も自在に作れます。
棚板は平らなので色分けた模様は崩れずに、
そのままの模様で綺麗に焼き上がります。
こうしてガラス板を作ったら、
そこに絵を描いてもいいですし、
別に作ったガラス板を重ねてもいいですし、
後はお好み次第です。
パウダーフュージングの作品作りは、
このガラス板作りから始まります。
上の写真はY.S.さんが
棚板にガラス粉を置いているところを撮ったものです。
制作するときに少しづつ残ってしまった
色ガラスの粉を取っておいて、
それを使って波柄の板ガラスを作るところです。
そして、下の写真が出来上がったガラス板です。
これからどんな作品になるのでしょう!!
楽しみです。