スランピング技法の型がいっぱい

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パウダーフュージング技法  2015/09/21 (月) 12:35 水吉郁子
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今回は、お皿を成型するときに使う型の話を書こうと思うのですが、
その前に、お皿を作るときの工程を簡単に紹介します。

まず、粉ガラスを棚板に置き、電気炉で焼成してガラス板にします。
その際に、模様を描いたり、絵を描けば、模様や絵を描いたガラス板ができます。

次に、その平たいガラス板をお皿の形に成形します。
その方法はいくつかありますが、
浅いお皿のときは、スランピングという技法を使います。

まず、お皿の形の型の上に平たいガラス板を置きます。(下の左の写真)
それを電気炉で加熱すると、ガラス板が柔らかくなり、
型に沿ってガラス板が変形します。(下の中央の写真)
その結果、お皿ができるというわけです。(下の右の写真)
スランピングはフュージングで広く使われている技法で、
パウダーフュージング技法独自のものではありません。
でも、私は型の作り方が他と違います。
一般のフュージング技法だと石膏で型を作るのですが、
石膏は電気炉で高温に加熱すると脆くなり、数回使うとダメになります。
結果、型は使い捨てになり、その都度作り直さないといけません。
また、陶器で作った型が市販されており、それを使う方法もあります。
陶器の型は丈夫なので何回も使えますが、
市販品は形が限られており、
こんな形が欲しい、と思ってもままなりません。

そこで、自由に形を作れて、何度も焼けて、しかも安価なものはないかと、
いろいろ探した結果、耐火セメントを使って型を作るようになりました。

耐火セメントは吹きガラスの溶解炉や陶芸の窯などの
高温になる箇所で使う建築資材です。
そんな建築資材で型を作る人など、その当時は誰もいなかったので、
業者から購入するだけでも大変でした。
建築資材ですから、25キロの大袋しかなく、
さらに、一つ二つじゃ業者が相手にしてくれません。
何とか頼み込んで
「しょーがねぇなぁ、じゃ100キロなら売ってもいいよ」
ということになり、100キロ買いました。

誰もやったことがないのですから、
上手く行くかどうかも分かりません。
そんな状況で100キロも買うのはちょっと勇気でしたけど、
実際に手に入れて、型を作ってみると、
耐火セメントはなかなかの優れものでした。
陶器の型だと乾燥するときに縮んだり変形したりするのですが、
耐火セメントの型は縮みや変形がなく、
耐久性も十分で、20年近く繰り返し使っている型もあります。
ガラスだけをずーーーーっと触って作品作りがしたい!
そんな思いをかなえてくれた材料です。

この方法で約20年、
新作を考える度にそれに合った型を作り足してきたので、
こんなに沢山になりました。(最初と最後の写真)
作ってはみたものの、意外と使えない型もあって、
それは捨てたのに、まだこんなにあります。
電気炉で加熱するとき、一度に沢山の作品を焼けるように
大きな型は2~3個、小さい型やよく使う型は5~30個ぐらい同じ型があります。
だから、こんなに多いのかもしれません。

もちろん教室でも型の作り方を教えますから、
教室で型を作る人もいますし、私も作りますから、今でも少しづつ増えてます。
私が作った型は教室で自由に使ってよいことにしてますし、
教室の人が作った型も同様に自由に使えるルールにしています。
なので、誰かが型作りをすると周りの人は妙にわくわくしてきます。
他人のふんどしじゃなくて、他人の型でお皿を作る、かな(笑)
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コメント

2023/06/22 (木) 16:37, 廣田達夫

ㇲランピング用のモールドを石膏で試みていますが、脆いのですぐ破損してします。
耐火セメントでの制作方法をご指導願えますか?

2023/06/22 (木) 22:44, 水吉郁子

コメントありがとうございます
耐火セメントに水を加えて混ぜ、
原型に盛って乾燥し、原型を外して焼きます。
焼きあがったものに離型材を塗ってスランピング型としてつかいます。

形によって型取りの方法は色々あります。
教室では作りたい型の希望を聞いて作業工程を見ながら説明しますので
文書だけでは説明は難しいです。